研究例
研究例1
分子動力学法により,ハードディスク(HDD)の磁気ヘッドとプラッタ(ディスク)を想定したモデル(モデル化のために周期境界条件を適用してある)の計算結果を可視化した一例を下に示す.橙色球で示す平行平板が磁気ヘッドとプラッタに対応し,互いに逆方向に直線運動をしている.両者の間隔は最新のHDDに対応する10 nmである.一部の気体分子の軌跡を緑色線で,その最終位置を紫色球で示してある.固体表面と複雑な衝突をする気体分子,固体表面に物理吸着して熱振動する気体分子,気体分子同士の衝突等が生じている様子がわかる.また,このような分子流と固体との間の摩擦力も解析評価している.
▲HDDのプラッタとヘッドを想定したシミュレーション
研究例2
近年,宇宙空間上のスペースデブリ(人工的な破片)の衝突による人工衛星の損傷が問題となっている.実験室内では物体を十分に加速できないので模擬実験は難しい.分子動力学法により,上から下へと速度10 km/sで運動する飛翔体と単結晶鉄との正面衝突を計算した.下に衝突直後の両者の断面を示す.黒色球が鉄原子,灰色が飛翔体である.衝突により運動エネルギーが熱に変換されるため,飛翔体は瞬時に気化する.鉄表面には衝突による凹みが形成される.鉄内部は多結晶化するとともに,衝突箇所下部にはV字型の結晶粒界が形成され,その頂点ではボイドが発生する.これを起点として,下から上へと結晶粒界に沿ってボイドが成長する様子が観察される.
▲飛翔体の衝突によって発生するボイドのシミュレーション