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 マルチスケール組織・界面制御学研究室(旧マテ2)では、
異相界面科学、マイクロ接合、電子実装材料、ろう付、表面処理、金属の腐食に関する材料科学的研究を遂行しています。


 ろう接とは、接合母材間に母材の融点よりも低い融点を持つ金属を溶融状態で注入し、溶融金属を凝固させることによって、接合を行う技術です。 流入金属の融点が450℃以上の場合を”ろう”、それ以下の場合を”はんだ”と呼んで区別しています。

 

 

 

 

 

Sn-3.0Ag-0.5Cu鉛フリーはんだのミクロ組織

  ろう接は、溶融溶接と比べ母材が溶融することなく接合されるため、 仕上形状のままの接合が可能であること、多数接合部の同時接合が可能であること、精密・微細接合が可能であること、異種材料の接合も比較的容易であること、といった多くのメリットを持っています。

 ”ろう付”は、航空機用エンジン、熱交換器、タービン発電機、新幹線車両のハニカムパネルなどに適用されており、”はんだ付”は近年のIT社会を牽引する携帯端末、ノートPC等のエレクトロニクス機器のマイクロ接合部に応用されています。
 
 我々のグループでは、様々なろう接接合部を対象として、新規接合工法の開発、ろう材の開発、接合部の金属組織学的評価等を実験を中心とした材料科学的アプローチにより研究を進めています。


Fe-Cr基ろうによるSUS304鋼のろう付部ミクロ組織(左) 腐食試験後の組織変化(中央) アノード分極試験後のろう付部表面の形態(右)

   ピラー状IMC分散マイクロ接合

 

 

Sn-3.5Ag- 0.5Cu-0.07Ni- 0.01Ge微小試験片の疲労試験(150℃)における亀裂発生箇所のEBSD解析結果
(左: GB map(結晶粒界像) 右: IPF map(逆極点図))


 更に、マイクロ接合においては、地球環境への負荷の問題からクローズアップされている鉛フリーはんだを研究対象として、はんだ材自身の機械的特性評価および鉛フリー接合部の熱疲労強度に関する研究を遂行しています。

FEM解析による電子機器用Chip Scale Package接合部の熱サイクル解析例


 また、車載用マルチマテリアルに代表される異相界面科学に関する研究も遂行しています。
 CO2排出量削減のため、自動車をはじめとする輸送機器の燃費向上策として、車体の軽量化が進められています。従来、自動車用の材料には、主に鋼が使用されてきましたが、鉄鋼材料に限定することなく、アルミニウム(Al)やマグネシウム合金および繊維強化樹脂などの様々な材料を適材適所に採用することで車体の軽量化を図る「マルチマテリアル化」の取り組みが進められています。
 マルチマテリアル化対応技術では、鉄鋼材料/Al合金、鉄鋼材料/樹脂、Al合金/樹脂など、様々な異相界面の創製が必要となります。そのため、異材接合/接着プロセスの開発、異相界面の材料科学と力学特性、異相界面の界面化学、異相界面の性能・信頼性評価などが課題となっています。このマルチマテリアル化は、ITおよびIoT社会をけん引する電子機器部品分野でも進行しています。特に、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体の開発により、新幹線や電車、次世代自動車、太陽光発電、建設機械、植物工場、農業・畜産ハウスなどへの広範囲な利用が期待されるパワー半導体モジュールでは、電子版マルチマテリアル達成のため、異相界面科学に関する研究開発が進められています。
 当研究室では、車載用マルチマテリアルから電子版マルチマテリアル、更にはSociety 5.0で実現が期待されるフィジカル空間版マルチマテリアルまで見据えた異相界面科学の研究を進めています。

(001)優先配向銀めっき皮膜の室温におけるセルフアニーリング現象のEBSD観察結果

80℃95%R.H.試験による構造用接着剤破面とそのFT-IR分析

 

 

 

 

          ハイテン鋼溶接部の疲労試験による破断


Cu/エポキシ樹脂接合体の高温高湿環境下における強度変化(左) 接合体破面観察結果(中央) FT-IR分析より定義した吸水度合いの変化(右)