研究紹介


See-1st(現状把握) ー Plan(計画) ー Do(実行) ー See-2nd(検討)

機能性界面・表面創製研究室では、
金属の固相接合機械構造用部材の高機能化[高強度・耐食性・耐摩耗]に関する研究を行っています。本研究室の特色は、ミクロな世界では「はんだ材料(ろう・はんだ付)を、マクロな世界では「機械構造用材料(アルミニウムやステンレス鋼の表面硬化・耐食耐摩耗性の向上)」を対象とし、どのような条件がそろえば日本を支える産業社会ニーズに応えられる材料が得られるのかを探求してゆくところにあります。
また、近年の機械部品の小型化に伴う微細加工技術の発展はめざましく、中でもFIB(収束イオンビーム)加工装置は、ナノオーダーの加工が可能であり、応用利用が期待されています。


表面改質法を用いた各種金属の低温・低加圧固相接合技術に関する研究

 工業製品の組立て・加工において、金属材料どうしを接合する技術は、産業の発展と開発の基盤技術として重要な役割を果たしてきた。中でも接合技術は、重厚長大型の製品に加えて、電子部品の組み立て実装など軽薄短小型製品まで適用範囲が拡がっている。
しかしながら、圧接法や溶接法等の高温・高加圧を必要とする従来の接合技術は部材に与えるダメージを考えると適用できる材料や形状は非常に限られたものになる。本研究では、表面改質法を用いた低温・低加圧固相接合技術の研究を行っている。


① 金属塩生成接合法(Metal Salt Generatin Bonding)
拡散接合において、表面酸化皮膜は接合阻害因子として知られている。そこで、この酸化皮膜を様々な手法で置換〔高融点酸化物→低融点化合物〕し、固相状態での接合を可能とする。

    Sn/Sn固相接合界面微細組織と強度に対する金属塩生成効果  

電解研磨仕上げしたSnの表面同士をつき合わせ、接合温度を443 K、接合圧力を7 MPaとして接合した場合、接合界面には膜厚10 nm程度の酸化皮膜が観察された。この酸化皮膜を有機酸により改質処理を施すと、約40 K低い接合温度で母材強度を有する継手が得られることを明らかにした。



② 液相拡散接合(Liquid Phase Diffusion Bonding
拡散接合において、表面酸化皮膜は接合阻害因子として知られている。そこで、この酸化皮膜を、接合界面近傍に形成した液相中に取り込み、凝集・分散させ、部分溶融状態での接合を可能とする。

     インサート金属を用いたSn/Sn液相拡散接合界面微細組織

エメリー紙研磨仕上げしたSnの表面にインサート金属を適用し、接合温度453 K、接合圧力を7 MPaとして接合した場合、界面に形成させた液相中で酸化物が低温で凝集・粗大化し、インサート金属を適用しない場合に比べ約40 K低い接合温度で母材破断する継手が得られることを明らかにした。



新しいろう付法の開発 

ろう付とは450 ℃以上で金属同士をつなぐ手法である(はんだ付は450 ℃以下)。歴史は古いものの接合部の強度や腐食など、課題は山積しているのが現状である。そこで、接合条件(温度・圧力・時間など)の最適化を行うと同時に、ろう材あるいは接合表面に工夫を施し、低温・低加圧・短時間ろう付を可能にする手法を開発している。



機械構造用部材の高機能化 

自動車や航空機に搭載される部品は、軽量化が求められ、ギアや軸に求められる強度・表面特性は増大傾向にある。そこで様々な手法を用いて、安価な材料に種々の高機能表面特性を付与する技術開発を進めている。

① 接合と表面窒化同時処理手法の開発
鉄鋼材料や非鉄金属表面に各種金属を配し、窒化することで、表面硬化・耐食性・耐摩耗性を向上させる。

② 表面拡散反応硬化
歯車材料・工具材料を対象に、遷移金属元素を様々な手法・順で拡散させ、その化合物を表面に形成させることにより、表面硬化・耐食性・耐摩耗性を向上させる。

   硬化処理後の各種表面特性(ナノ構造・硬さ・摩耗)の評価事例

TEM像で示されるように、処理表面は非常に滑らかで、断面硬さは1800 HV(約HRC80)を超えていた。また摩耗試験を実施した結果、より深い層状組織中で摩耗の進行が止まり、その後の摩耗を抑制する効果を有することが明らかとなった。